いぐあな

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300字小説

夢の終わり

 『起きたまま見る夢』といえばバーチャルワールドだ。しかし、多くのVWが乱立する時代、サービスを終了するものも多い。そんな一つ、結婚前によく行ったVWから、VRグラスに終了の通知があった。

「懐かしい……」
 息子を連れてアクセスする。最新のVWと比べると古臭いが、水彩画のような背景グラフィックが好きで、夫とよくデートをした。そんな美しい風景のなかに当時の私と夫が浮かぶ。
「誰?」
「お父さんよ」
 宇宙探査に従事する彼をモニター越しでしか知らない息子が目を輝かせた。

『夢が醒める前にもう一度、楽しまれたのなら幸いです』
 メッセージがグラスに浮かぶ。息子と共にコメントを返す。
『最後まで楽しかったです。ありがとう』

お題「夢が醒める前に」

3/20/2024, 12:12:21 PM