冷たかった金魚
「へー、金魚飼い始めたんだ。」
幼馴染と久し振りに遊んで、家に呼んだ。
玄関の近くには最近飼い始めた金魚鉢が置いてあって、中で泳いでいる金魚も凄く元気だ。
珍しい物を見るかのように金魚を眺めていた幼馴染を少し可愛らしくも思えた。
「うん。お母さんの趣味でね。」
「へー…やっぱり、お前のお母さんっていい趣味してるよな。金魚飼うとか考えられないもんな。」
「そうかな?」
一緒に金魚を眺めながら、いつも通りの会話をしていた。
「そういえば、お前のお母さんって最近寝たきりになったんだよな。」
「うん。私が一人暮らしを始めてから直ぐに寝たきりになったね。私も仕事が忙しくて、基本お父さんと弟に任せてるんだけど…。」
元々ジト目の幼馴染は、私を見つめながら話を聞いていた。
何を考えているのかも分からないけど、何となく一緒に居て楽なんだよね。
「お前も大変なんだな。そうだ、一緒に煙草吸わないか?」
「うん!良いよ!ベランダはコッチ。」
いつぶりだろうな。
こうやって家に集まって、一緒に煙草を吸いながら街を眺める。
お互い忙しいし、あんま時間も取れないんだよね。
「小学生だ…夏休み始まったのかな。」
「もうそんな時期なのか。」
煙草を吸っている幼馴染を横目で見てみると、何処か切なさを感じた。
いつもと変わらない筈なのに、本当に何となくだ。
「私ら、2年前はこうやって一緒に死のうとしてたんだもんな。早いな。」
「そんな事もあったな。」
「前世の事とかいっぱい話してたもん…あるかどうかも分からないのに。」
「…………俺は信じてるよ。前世は人間になりたくない。」
「どうして?」
「……また、大切な人を失うのが怖いからだよ。」
数年前、とあるマンションの屋上から男女二人が飛び降り自殺をしたと放送された。
男側は奇跡的に生き残っていたものの、女性側は即死だったという。
「本当は…お互い、生きたかったんだよなぁ。」
一人の男が鼻をすする音が聞こえてきたのだった。
8/26/2024, 11:52:46 AM