白眼野 りゅー

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「好きだよっ!」
「ああ、はいはい」

 こういうとき、素直に好きだよと返せない自分のことを、あまり好きになれない。


【好きになれない僕と、嫌いになれない君の好きな人】


「ちょっと何さその気のない返事! 好きでしょ! 好きって言えー!」

 悪いとは思っている。

「ここまで言っても好きって返してくれないとか、君、心ってもんがないの?」

 心があるからこそ、言えないこともあるんだよ。言えない代わりに、別の思いを伝えよう。

「……世界で一番可愛くて、愛しいと思ってるよ」
「え! じゃあつまり君は私の事が……?」
「……」
「す……?」
「…………」
「なんでここまで来て黙るのさ! なんで好きは言えなくて、そんな気恥ずかしいことは言えるのさ!」

 言いたくないのだ。僕が僕のことすら好きになれないうちは、軽率に好きだなんて言葉を。

「まあ君のそういう素直じゃないとこ、嫌いじゃないけどさ」
「……僕も」
「同意のタイミングおかしくない!? 私が『好き』って言った時に言うんだよ、そういうことは」

 ……僕も、君が愛してくれているというその一点のために、自分を嫌いになれずにとどまれているよ。

4/30/2025, 6:40:29 AM