妻に締め出されて家に入れない。チェーンロック越しに覗く不機嫌な妻は「あいことばをどうぞ」の一点張り。途方に暮れていると思わぬ助け舟があった。郵便配達員だ。「お疲れ様です。ありがとうございました」愛想良く微笑んだ妻は配達員が視界から消えるや否やギロリとこちらを睨み、朝干し忘れたでしょ洗濯物と言い放った。慌てて洗面所に向かうときっちりと干された衣類が除湿機の風に忙しなく揺れている。妻はリビングで腕を組んで待ち構えていた。僕は素直に頭を下げる。恐る恐る顔を上げると妻はもういつも通りだった。ごはんあっためるねとパタパタと台所へと向かう。子どもの頃、繰り返し母から聞かされた言葉がある。どれだけ長く一緒に暮らしてもごめんなさいだけはちゃんと言いなさい。僕達にとっては他のどんな言葉よりも、ごめんなさいが仲良く暮らすためのあいことばなのだ。#愛言葉
10/27/2024, 11:37:21 AM