たつみ暁

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戦はすべてを薙ぎ倒した。
どんなに花が綺麗に咲いても、人はまた吹き飛ばす、と哀しい瞳で言った少年は、どこにいただろうか。
だけど、人はまた何度でも花を植えると、少年を諭して涙を呼んだ青年もいたか。

いつかの物語を思い出しながら、焼け野原を見渡した。
白い花咲く草原は、見渡す限り、死の痕が刻まれている。
大戦は終わり、戦犯は処刑され、国々に新たな指導者が立っても、失われたものは戻らない。

英雄と呼ばれるようになったわたしの、大切なひとびとも。

「師匠!!」

死にかけていたところを助けたら押し掛け弟子になった少女が、驚き顔でわたしを手招く。
近づいたその足元には、一輪の白い花が揺れていた。

吹き飛ばされたものは戻らない。
だけど、新しい希望は、いつか芽吹くのだろう。
ひとよ、過ちを繰り返すな、と。

お題:一輪の花

2/24/2025, 10:08:47 AM