ゆずし

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友人の結婚式に招待されると、時の流れを嫌でも実感してしまう。その式典には当然当時の同級生なんかも参加していて、皆の精悍たる顔付きに幾度となく驚かされるものだ。

幸せを呼ぶ鐘の音が響き渡った。青空の下、新郎新婦からふわりと放たれた花束は、次なる結婚を呼ぶとされる。言葉くらいは聞いたことがある。ブーケトスと言うやつだ。

何気なく見ていたが、まるでブラックホールのようにぼくがいる場所へと引き寄せられていく。逃げる訳にもいかないので、片手だけ出してキャッチ。しかし、ぼくよりも一回り小さい手によって更にその花束は掴まれていた。

その主は、ぼくの横にいた女性。見違えるように変わってしまったけれど、当時の思い出は案外鮮明に覚えているもので、その女性の顔やら特徴が、昔の記憶とパズルのピースを嵌めるように合致していく。

わぁぁ、と一際大きな歓声に包まれた。まるで、次の結婚相手は自分達だと祝福されるように。

こんなのはただの迷信、信じるに値しない戯言だけど。

「随分大きくなったね、君」
「そっちこそ、凄く女性らしくなったというか」
「何それ。普通じゃない?」

くすくす、と笑う様は昔と同じだった。今だけは、そのジンクスとやらにあやかってみてもいいかもしれない。

2/9/2023, 12:54:50 PM