少しショック表現あり
注意
外に出る準備を終え、部屋を出る。
ふと空を見上げると、先程まで綿菓子の様に白くふわふわな雲が散らばった蒼い空はなくなり、今や墨をぶちまけたように曇り空が広がっている。
これは時期に雨が降るだろう。
それまでにあいつの部屋に着き、あいつの為の芸術を完成させなければならない。
車を使って付近まで向かい、そこから徒歩でその部屋へ向かった。
途中で曇り模様に負けず営業している花屋があった為、あいつに買っていってやれば喜ぶだろうかと、適当に花束を見繕ってもらう。
……なるほど、あんたはそこにその色を置くんだな。
職業病とも言えるソレを頭の中で考えながら、花束の完成を待つ。
出来上がったソレを受け取れば、気分はさながらプロポーズ。
なぁんて。今から会いに行くのは同性で、向こうは俺の事を親友だと思っている。
俺は……まぁ、吝かでは無いが、そんな感情もないやつと付き合えと言われても、それはこちらがしんどいのだ。
花屋を出てから5分と経たずに着いたその部屋は、俺は初めて立入る場所で。
ドアノックでドアを叩き、アイツが出て来るのをまつ。
『…久しぶりだな、元気にしてたか?』
「あぁ、お前こそ。やつれてるように見えるが。」
なんて事ない話を繰り広げながらリビングへ迎え入れられる。
リビングには真っ白で大きなキャンパスが一つ、それと沢山の絵の具。
『ところで、その花束はなんだ?まさか俺になんて、言わないよな?』
「まぁまぁ、こんな天気だってのに、頑張って営業してる花屋があったんだ。俺からじゃなくて、奥さんから貰ったって思って飾ってくれよ。」
勝手に絵の具を取りだし、直ぐに筆を手に取る。
気付くと、あいつは寝ていた。
目の前のソファに足を組んで、静かに。
あぁ、そうだ。これで完成するのだ、俺の芸術が。
パレットナイフを逆手に持ち、目の前に振り上げる。
ぐじゅり。
パレットナイフは本来切るものでは無い為、相当な力が必要だったけれど。
なんで、とか、いたい、とか、色んな事を苦しそうに囁くお前を見て、俺は初めてこんな高揚感を感じたよ。
今までで1番の力を振り絞り、心臓を一突きした。
それ以来お前はパタリと動かなくなった。
お前の血を使ってキャンパスに芸術を広げ、最後にお前をここに横たわらせる。
はは、はははは、は、完成した。いま、俺は芸術の完成を見たのだ。
諦めないものが、勝つのだ。
気付かぬ内に表情は 笑顔になっていた。
窓を見上げれば、空が泣いていた。
#空が泣く
9/16/2023, 3:16:35 PM