在葉

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私の日記帳


 7月7日の次は、もう12月24日。
 特別のある日に、さして自分が特別なわけではないのに、便乗するのだ。
 特別な名前のある日は、なんでか、何かしようかなという気持ちになる。
 誕生日も同じ。生まれた日だから祝うというけど、じゃあ毎日生きてるのは祝わないの? 生まれた日だから特別というのはよく分からない。でも便乗してケーキは食べる。
 …そういう斜に構えた考えで、特別とは思わないものの、一般的には特別とされる日に、便乗して生きてきました。

 親友が憂鬱そうにしていて、消えてしまうのではないかと思う日々が続きました。大学で出会ってかれこれ1年と少しの、私と似た、斜に構えた親友でした。私と似ているから、普通、ご飯に一緒に行ったり、遊んだりということは、あまり効果がないように思えました。
 誕生日便乗ケーキ、私のはスフレ、彼女のはチーズタルトで、アパートに突撃しました。休日、インターホン、絶対これ狸寝入りだわ。
「ちわー、バースデーお届けに参りましたー」
30秒くらいして。
「なんて?」
 部屋着のまんま、ガチャリと彼女。
「バースデー便乗ケーキだよ」
「あー。私のか。紅茶が無いや」
「あるよ、万全」
「ナイス」
 散らかり気味のワンルーム。ちゃぶ台を囲んで、あのさ、と。
「便乗っつったけど、実はこれ、便乗じゃなくて」
チーズタルトを頬張る親友に、はじめてまともかもしれないバースデーを届ける。
「誕生してくれてありがと。あたしの誕生日も一緒にケーキ食べような」
もぐ、と親友は口を止めて、やがて少しにやっとして飲み込んだ。
「おっけー、わかった。それ目指して生きる。その次、今日から365日後は、私のな。次はフルーツタルト。忘れるなよ」
「多分忘れるわ」

 帰り道に来年の日記帳を買って、365日後の今日に記す…フルーツタルト。

8/26/2023, 5:28:05 PM