「前から思ってたんだけど出会いはいつ?入ってからだよね?」
「ん~まぁそうといえばそうなんだけどさ~」
「え、なになに!?違うの!?」
お弁当の中の卵焼きを箸でつまんで先生との出会いを思い出した。
先生と私の出会いはとても衝撃的なものだった。
「ここの道は……右だったっけ、」
自分の生活圏内とは少し離れた高校を選択した私は通学にとても困った。
なぜなら私が生粋の方向音痴だからである。
前日にあんなに道を確認したのに……!と思いつつ、無慈悲にも時間は進む。
初日に遅刻なんて本当にやばい。やばすぎる。不良?
良くない言葉が頭をぐるぐる回っていると、余程重大に見えたのか若い男の人が声をかけてくれた。
「あの……大丈夫ですか?どこか具合でも…、」
恐る恐るといった様子で声を掛けてくれた人こそ先生だ。
一目見た瞬間先生が好きだった。
一目惚れとか恋ってこういう事なんだと初めて知った日だった。
「あっ!あの!いや……迷子に、なってしまって……」
こんな年になって迷子、笑われてしまうだろう。
そう思うと恥ずかしくて最後の方は聞き取れたか分からない。
「なるほど。学校に行けばいいんだよね?」
「は、はい!」
「じゃあ連れて行ってあげる。俺の目的地もそこだし、」
「え、先生…ってことですか、え」
「まぁ、そうなるかな。……ぁ、やべ、急がないと俺も遅刻する……急ぐよ!」
そこからは全力疾走だ。
スーツから繰り出される速さと思えないほど先生は走るのが早かった。
足を懸命に動かしてなんとか先生について行く。
「ま、間に合った……!」
全力疾走のお陰か5分前には校門に着くことができた。
初日から遅刻の不良というレッテルは貼られずに済みそうだ。
「本当にすみませんでした……!迷惑をかけてしまって」
「迷惑なんて決めつけないで。どうせなら喜んでよ、ね?」
「あ、ありがとうございます…、?」
「うん、それでよし!じゃあ学校生活楽しんでね」
「はい!ありがとうございました」
これから学校生活、もう楽しみでしかない。
だって先生と過ごせるんだ。どうしよう、世界で一番幸せかもしれない。
「…ぃ、おーい!まぁた妄想の世界に行っちゃった?」
「先生やっぱり運命だ……」
「はいはい、」
2023.12.8「ありがとう、ごめんね」
12/9/2023, 12:33:12 AM