――親に言われたことが、俺にはできなかった。
誰からも愛されず、親にはものとして扱われ、生きる価値などありもしない。ただ親に言われたことをひたすらにやり抜くことだけが、俺の生きる希望。
いくらテストで98点を取ったって、100点を取らなきゃ意味が無い。通知表でオール5のオールAを取ったって、それが当たり前だから褒められることも無い。
すべて、この顔がいけないのだ。
母にも父にも似ていない、このブサイクで醜いこの顔が。
こんな人生なら、生まれて来なければよかった……。
どれだけ頑張っていても、この顔が邪魔をして、誰にも愛されないし、誰にも褒められない。
誰からも応援されないのに、自分は1人で頑張るのは、やっぱり誰かに認めてもらいたいのだ。
そんなある時、親から言われた“それ”で、再度認識した。
もう僕は、この世に生きる価値も無いのだと、その時心から痛感してしまったのだ。
僕は最後まで、完璧では無かった。親が望むような完璧な息子には、もうなれないのだ。
両親に似ないこのブサイクさ……。
それだけが、僕がなりたい“完璧な僕”になることを邪魔したものだった。
俺がこの世を去るのも、この醜さがもたらしたこと。
僕が居なくなったところで、誰も悲しまない。
「あんたなんて、産まなきゃ良かった」
嗚呼、なんでこんなにも胸が苦しいのだろうか……。
でももうどうでもいいや……。
自宅のマンションの屋上まで、ゆっくりと階段を昇っていく。
はぁ……やっぱり、僕は完璧じゃない。
親に認められたいだけなのに、どれだけ頑張っても認められないのなら、僕に生きる価値などないのだ。
「さようなら、この世界。さようなら、完璧じゃない僕」
そう呟いてから、僕は屋上の柵を飛び越えて、空中へと1歩足を踏み出して――。
8/31/2024, 3:56:01 PM