織川ゑトウ

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『思い出のハンカチ』

ーーー2023年7月6日

今日、親友が死んだ。
原因は不明。急な体調不良で倒れたと聞いている。

「チーン」

いつもは好きな線香の香りが、きつくピリッと鼻先にまとわりついた。
線香の匂いを嗅がないようにと、鼻にハンカチを当てる。
「……あ」
このハンカチ、昔親友がくれた物だ。

ーーーー2013年8月8日

「ねぇ、ちょっと待ってよ~」
「お前足おっせーなぁ」

その日は、八月にふさわしい真夏日だった。
夏休みということもあり、僕たちは公園へ遊びに出掛けていた。

「そーだ。これ、やるよ」
「え?…ハンカチ?なんで?」
「お前怪我よくするだろ?血とかそれで拭けねぇかなって」

ーーそう言って彼は僕に黒色のハンカチをくれた。

……なに言ってるんだよ。勝手なこと!!
俺は体調不良なんかで倒れてない!お前が殺したんだろ!
死ぬ前に見たよ、お前がそのハンカチで血に濡れた手を拭くのを!
線香の香りがきつかったのだって、まだハンカチについていた血の匂いだろ!!

「……黒色をチョイスしてくれた君はさすが僕の親友だなぁ」

そりゃそう思うだろうな!!黒色だと血が付着したこと分かんないもんな!!
クソ……お前を親友だと思った俺がバカだったよ!!

「……また、お通夜で会おうね」

僕にとっては、思い出のハンカチ
君にとっても、思い出のハンカチ

思い出…記憶の中の出来事や体験を思い浮かべること

お題『友だちの思い出』

7/6/2023, 1:15:09 PM