霜月 朔(創作)

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良いお年を




寒風に背を押される様に、
忙しなく行き交う、街の人々。
私も、そのパーツの欠片として、
凍てつく冬空の下を急ぎます。

愛しい貴方の魂は、
あの日、突然、
悪意に、連れ去られました。

どこを彷徨い歩いているのか、
どんな景色を見ているのか、
分からなかった、貴方。
ただ只管に、帰りを願い、
待つことしか、できませんでした。

「良いお年を」と、
当たり前の言葉さえ、
貴方には届けられなくて。

でも、今は。
貴方が隣にいてくれて、
私の拙い言葉に微笑み、
そっと頷いてくれるのです。

喧騒が収まり、広がる静寂。
夜の冷たさに包まれながら、
またひとつ、年が終わります。

どうか、良いお年を。
そして、また来年も、
私は貴方と共に有りましょう。
…この先も、ずっとずっと。

1/1/2025, 7:41:04 AM