思えば一年前も曇天であった。曇り空、ホテルの上階で、望郷の念にかられていた。曇り空は晴れることなく、大粒を降らした。ぽつぽつと、ぽつぽつと。降り止まず、降り止まず。ぼろぼろの傘をさして、なんとか一周、歩いてきた。あばら屋で、雨音に目覚めさせられた。土砂降りだ。手元にあるのはぼろ傘だけ。太刀打ちなんて、もうできない。それでも、傘の形を保つかぎり。嵐が過ぎるのを、じっと、待つのだ。
3/29/2025, 12:56:05 AM