ののの糸糸 * Ito Nonono

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No.38『バカみたい』
散文/掌編小説

「バカみたい」
 君のその一言に、思わず言葉を失った。まるで汚いものでも見るような、蔑むような眼差しで見下されつつ発せられるその一言は、出会った頃のことを思い出させる。
「バカみたいだよね、男子って」
 そう笑いつつ、教室の掃除を手伝ってくれる君が好きだった。友だちがエッチな漫画を持って来た時に、
「ばっかみたい」
 そう言いつつ、真っ赤な顔をして、教室を出て行く君も。

 いつからかお互いに好きになり、いつの間にか恋人同士になった。付き合いはじめの『バカみたい』には、いっぱいの愛情が詰まっていたのに。

「確かにバカみたいだよな」
 俺は思わずそうつぶやいて、君の部屋を出て行く覚悟を決めた。


お題:バカみたい

3/23/2023, 8:24:45 AM