G14

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 ガタンガタンと体が揺れる。
 私たちは妻と息子の3人で、『銀河鉄道』に乗っていた。
 目的は、地球に住む親に孫の顔を見せる事。
 息子が生まれてから、初めての帰省だ。
 自分たちの住んでいる惑星から地球は遠いので、なかなか踏ん切りがつかなかったのだ。

 理由は、惑星を移動するには、お金がかかるし時間もかかるから。
 というか面倒くさい。
 そんな訳で行きたくなかったのだが、『金なら出す』という親と、『銀河鉄道に乗りたい』という息子、『いいかげん諦めろ』という妻の意見により、多数決で出発が決まった。
 多数決なら仕方がない。

 そんなわけで乗り込んだ銀河鉄道だが、さっきも言ったように目的地に着くまで長い。
 列車特有の心地よい揺れに眠りかけるも、なんとか意識を保つ。
 幼い息子が危険な真似をしないように見張る必要があるからだ。

 一方で妻はと言うと、すでに幸せそうに寝入っていた。
 いつも暴君である息子の相手をしているのだ。
 日頃の疲れが溜まっているのか、椅子に座った瞬間眠りに落ちた。
 普段の苦労が偲ばれる。
 今だけは平和に寝かせてやろうと心に誓う。

 そしてその元凶である息子はと言うと、普段の暴君っぷりが嘘のように静かに窓の外を見ていた。
 初めて乗った列車から見る景色は格別らしい。
 窓越しに見えるのは、黒い空に浮かぶ星々の輝きを、息子は熱心に眺めてみる。
 星に興味があるのだろうか?
 将来は天文学者にあるのかもしれない。

 そうなると、この列車は息子にとって天国みたいな場所だろう。
 『銀河鉄道』の名の通り、この列車は星々の中を通ってるのだ。
 なにせ360度、どこを見ても星、星、星。
 星が好きな人間にとっては、幸せだろう。
 私?
 私は一瞬で飽きた。

 いつまでも続く黒い空は私にとって眠くなるものでしかない。
 その上、この振動……
 ヤバい、眠い。


「ねえ、お父さん」
 さきほどまで窓の外を見ていたはずの息子が、肩をゆすっている。
 いつのまにこんな近くに……?
 もしかして寝てた?

「なんかあったか?」
 焦る気持ちを隠して息子に尋ねる。
 すると息子は、世紀の大発見をしたような顔で窓の外を指す。

「変な星がある」
「変な星?」

 息子が指を差した方向を眺める。
 見つけられるか自信が無かったのだが、『変な星』というのはすぐ分かった。
 なるほど確かに息子は正しい。
 その星は、他の星とは違い、青く光っていた。

「あれが爺ちゃんと婆ちゃんが住んでる『地球』だよ」
「地球!?
 アレが!?」
 息子は、もっと見ようと窓に顔を押し当てる。
 そんなに焦らなくても、すぐ見えるようになるのに……
 忙しい子である。
 
 息子と一緒に地球を見ていると、急に『帰って来たんだな』という感情が芽生える。
「ただいま」
 自然と口から言葉が漏れる。
 聞かれたかと息子を見るが、息子は地球に夢中で気づいていない。
 まあ聞かれたところで、何があるわけでもないのだが…… 
 私はもう一度息子の肩越しに窓の外を見る。

 窓越しに見えるのは、10年ぶりの地球。
 地球を出た時と変わらない、綺麗な星であった

7/2/2024, 12:31:05 PM