「こんにちは!」
突然、後ろから声をかけられた。
ハッとして振り向くと、1人の女が立っていた。
「こんな所で何してるの?」
そいつは首をこてんと傾げてこちらに問いかける。
そいつの顔には特徴的な痣があった。
とても大きくて、黒くて、醜い痣。
私はそんなやつの姿を見て驚いて、疑って、そして絶望した。
「私、生きちゃうんだ...」
ぽろりと涙が零れた。
屋上を通る風が私の涙を吹き飛ばしてしまった。
生きちゃうんだ。
生き残っちゃうんだ。
今日、生きるのをやめようと思ったのに。
ここで死のうと思ったのに。
「そう!私、生きちゃった!」
私にそっくりな、だけどどこか大人びた顔をしたそいつはニカリと笑った。
私、そんなふうに笑えるんだ。
「私、生きちゃったの。死ねなかったの。ほんとにその時はものすごく絶望した。なんで助かっちゃったんだろうって。生き残っちゃったから、おばあちゃんの泣き顔、見ることになっちゃった。」
死んだら、見なくてすんだのにな。
おばあちゃんは、私の味方。唯一の味方。
とっても優しいおばあちゃん。
でもおばあちゃんは体が悪い。
「ここではないどこか」
6/27/2023, 2:18:03 PM