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「逃避行をしよう」

君はそう言った。
望まれず生まれた子供達。仲間達。
最後に残った俺と君も、苦しかった。
2人で隣の国へ逃げよう、と決めた。
こんな冷たい国じゃない、明るい国へ。
鞄には、ありったけの、2人だけの思い出の品物を詰めて、
半年前始めた、2人の逃避行。
望まれず生まれた俺達だから、望んで生きた唯一の時間は楽しかった。生きてる、って思えた。
俺達は幸せだった。


それも一瞬で、儚く崩れ去った。
君は地獄に生きていたのに、誰よりも優しい人間だった。
だからきっと、終わらせたかったのだろう。
空腹に力尽きそうな俺に差し出された、食べ物。
虚ろな焦点の定まらない目で、それを咄嗟に掴んで食べた。
君の心で、君の命だった筈なのに、いや、だからこそ、食べてしまった。


そして着いた。隣の国へ。
君が忽然と居なくなった後、我武者羅に逃避行を続けて、漸く辿り着いた。
俺は臆病だったから、君のいない人生を最期まで生き続けるなんて、出来やしなかった。
本当は、君の希望に魅せられた人は沢山いたんだ。今、仲間達と、崖で想い出を語っている。
俺は、逃避行を終わりにする。君との追いかけっこも、終わりにする。昔、仲間達と遊んで、決着のつかなかった追いかけっこ。

「さあ、飛び立とう。全ては、鳥のように」

8/21/2024, 4:19:08 PM