“River〃”

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昨日乗せた客は久し振りに ... 31年目になるタクシードライバー経験で20数年振りに遭遇する狂気の沙汰という言葉がピッタリの ... あ れ は ... 見てくれ28,9歳 ... 行ってても33,4歳 ... 独身だろうな ... 女性である。中肉中背で少しガニ股気味、白く長いフリフリレースと重ね合わせのスカートを靡かせ乍ら走り寄って来た長さ肩下くらいの軽いウェーブが掛かった黒髪 ... そしてただ、まぁよいのだが ... 瞬間、酒鬼薔薇聖斗を想起させたキツネヅラだった ... のはいいのだがというか関係無いなわけで ... 。場所は表◯道ヒルズの裏手の某狭路付近からだったのだが ...

〝 赤◯1丁目の◯◯ビルまで、◯時55分までに、急いで下さい!〟

古参は皆そうなのだが時限付きこそ仕事と考えているので大歓迎なのだが少し走ったところで外装黄一色の宅配車両が道に迷っているかのようにノロノロ、そして徐行、一旦停止を繰り返していて ...

“ 道に迷ってるみたいですねぇ ... チィッ ... 参ったなぁ ... ”

思わず私が呟いた直後、女性客が ...

〝 そんなの私には関係無いです!兎に角55分までに付けてください!詰まってるなら ... 〟

詰まってるなら ... で女性客は言葉を止めたのだが、詰まってるなら ... どうしろと続けたかったのか少し気になったが ...

“ ぁ、ぇ、まぁ ... 兎に角急ぎます ... すいません ... ”

私はその時の巷の裏道という裏道をほぼ全て網羅しているので無論女性客が要求した55分より9分早く到着し、その女性客は僅かに安堵した笑みを浮かべつつ、かまっちゃらんないんだよ的な空気を充満且つ撒き散らし乍ら口早に〝 アリガトウゴザイマシタ! 〟と叫ぶみたいに告げたあと怱怱と足早に立ち去った。

世の中は甘くない。大都会なら尚更だ。とて、地方を見下していたりなどしていない。自然界の掟、戒律こそ都会など比較にならぬほど厳しい。

私はこの女性客のような人間に遭遇する時に憶い出したように ... そうだ ... この世界の全てを固く諦めた事をうっかり忘れて図に乗って真面目に一所懸命働いて来てしまっていたよ ... はははは ... 。

こういう人間がひとりでもいるこの世界を私は愛せない。愛せるものか。

 そんなの私にはカンケーないので、

       とにかく時間に間に合わせろ ...

これが、この青く美しい星の現実です。

私には関係大有りなんですがね ...

   他人であるあなたの一時一時の平穏が ... 。

4/11/2023, 11:46:54 PM