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 おれは嫌いだった。

 忙しなく、影の濃い無機質なその廊下に響く音が嫌だった。暗い部屋の向こうで起こってることに、全くの無沈着のように、我々のことなどどうでもいいかのように。

 それでも隣にいたあいつは、おれを友達と言い、ずっと楽しそうに話をしてくれた。パタパタと聞こえるそれに対して、
「誰かきた!お世話係の人かな?」
 だとか楽しそうにして。

 被検体のおれとおまえと。

 終わりはあっけなく、
 あの研究所という名の白い牢獄で、あいつは殺された。


 ……今でも怖い。
 手を引かれて笑顔で消えてったあいつを思い出す。

 それでも、無機質を抜け出して青空を拝むことについに成功したおれは、今、自らそれを鳴らしている。

 足を、必死に、弱々しく動かして。




 お題*足音

8/19/2025, 3:20:34 AM