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ところにより雨


「あー…」

降ってきたか。
もちろん傘なんて持っていない。
下校時間に合わせるように降り始めた雨を少し睨む。
勢いは増すばかりだ。

「はぁ…」

どうしたものか。

「あれ、傘持ってないの?」

声の方を向く。友人がいた。

「あはは…帰れなくなっちゃった」

「傘、入る?途中までだけど」

「いいの?」

「うん。それまでに止むでしょ
 止まなかったら近くのコンビニまで送ってあげる」

「ありがとう」

二人が入るには少し小さな傘。
お互いが濡れないようピッタリとくっつく。
あったかい。
友人とはいえ相手に触れることなんて滅多にない。
そう考えると鼓動が速まる。
伝わってしまわないだろうか。
少しでも離れようとすると
"濡れるでしょ"と言わんばかりに近づいてくる。
その度に心臓が跳ね上がっていた。


「じゃあね。また明日」

そう言って歩いていく彼女を見送る。
別れる頃には雨が上がっていた。
少し先のコンビニを一瞥する。

「もう少し降ってたらよかったのに」

不満げに言う私は表情を崩していた。

3/24/2024, 5:18:02 PM