「通り雨が上がったあとの葉を見たことがあるかい?雨の雫が下って、陽の光が透けてそれはもうこの世のものとは思えないほどに美しいのだよ。
写真を見せてあげよう。何枚でも、どんなものでも。
特にこんなのは珍しい、お気に入りなんだ。」
そう言ってカメラを送りながら笑う彼は、まつ毛の影を目に受けてとても美しく見えたが、伏し目の彼の目線はあくまで写真。私を見ることは無い。同じようですれ違う私と彼はまるで滑稽に見えるだろう。
彼が愛するのは自然であり、写真であり、人ではない。
だが、私は違う。願わくば、君と同じものを愛したい、がそれは出来ないのだ。私は、彼を今すぐに抱きしめ、背中に爪を立て、裂けるほどまでに彼を愛している。私と沈み、来世、生まれ変わっても私を覚えていて欲しい。机を挟んで、手を手繰り寄せて指を絡めて、抱きしめて、今にも一緒に死にたい。
「あっほら、みてごらん、通り雨が上がったよ。ほら、そこの木さ、右側の、そう、その木の1番手前の葉、あれは美しいよ。」
ファミレスの席に座って柄にもなくはしゃぎ、身を乗り出して窓から葉を撮る君のまつ毛を、陽の光が照らした。陽の光がまつ毛から目を照らす。透かして、見える。眼。そこに私は、この世のものとは思えない、神をみた。
うん、確かに、それは凄く、綺麗だね。」
9/27/2024, 10:38:29 AM