瑞希

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授業中、ふとした時に外を眺めている。
窓際の席だった時は、回数もそれなりに多かったような気もする。廊下側の席になった時は、外なんてほとんど見ていなかった。けれど、窓際になるとつい見てしまう。

記憶に残っているのは、中学校での景色だった。
春は、教室の窓から見えるギリギリのところに桜が咲いていた。誕生日が早く、学年が上がった最初は窓際で過ごした私は、窓の外(主に桜)をずっと見ていた。咲くまでに長い長い時間をかけて、けれど、咲き誇った数週間後にはほとんどが散ってしまう。そんな儚さが好きだった。

春がすぎた後、夏は緑が生い茂った校庭と空や雲を、秋はポツポツと見える赤や黄色の木を、冬は寒さを感じながら意味もなく校庭を眺めていた。

今考えると、住んでいた場所が団地で、あまり景色を見られなかったからなのかもしれない。教室の窓から見える景色が珍しくて、ふとした時に見ていたのかもしれない。

昨日までは当たり前の景色も、次の日には無くなっているかもしれない。あの時から私は、無意識にその景色を大切な思い出にしようとしていたのかもしれない。親の事情で転校が多く、けれど、そこで過ごした記憶を、友達と笑いあった記憶を忘れたくなかったから。

何年、何十年か先の未来。
もしあの場所に訪れることがあったのなら。
あの時と変わらないな、と思える場所があるだろうか。
少しずつ薄れていく記憶に、胸が苦しくなった。

7/1/2024, 5:40:43 PM