生粋

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【ジャングルジム】


幼かったあの頃

あらゆる所に秘密基地があった

林の中の切りガブ

積み上げられた岩の隙間

田んぼのすみっこ

神社の裏

干上がった用水路

結局どこでも良かった


あの日、秘密基地に選ばれたのは

ジャングルジム

秘匿性の欠片も見つからない

スケルトンの構造


コレを秘密基地と呼ぶには

歩み寄りが必要だ

ルールを決めた


最下層を入口とし

決まったルートを通り

最上部の本部へと到達する


出動の際には別ルートから下降し

決まった出口へ向かう

基地であるため

あくまで内部を移動

本部以外の外側に出てはならない

幹部達で協議の結果

基地内のルールが制定される


これでだいぶ基地っぽくなってきた


残る問題は

事件が起きない

悪の組織が現れることも無く

本部に集結した幹部は

周囲を警戒しながら

ただただ座ってるだけだ


耐えきれず事件をでっち上げる

何か居た気がする!

幹部達が所定の出口に移動を始めた

渋滞だ


一刻を争うこの時に

未だ誰も出動出来ていない

こんな事で地球が救えるのか


最後尾で業を煮やす俺隊長に

圧倒的な閃きが舞い降りた


他の隊長達は気付いてないが

実はこの基地

スカスカなのだ

今いる所からも地面が見える


脳裏にテレビで見た先輩ヒーローたちの姿浮かんだ

彼等はいつでも

電光石火で飛び出して行く


迷いは無かった

俺隊長は全身を真っ直ぐに伸ばし

気を付けの体勢をとると

地面への最短距離を飛び降りた

着地と同時にこちらに向けられる

幹部達からの羨望の眼差しが目に浮かぶ


少し気が緩んだのかもしれない


落下早々

俺隊長の体はどこかに触れたらしい

右に左に弾かれた


自らの定めたルールさえ守れない者に

制裁の運命は避けようもなく


着地の頃には

隊長は

最初に襲われた村人になっていた


泣いた

地球滅亡の日が如く泣いた


恥ずかしさと痛みと後悔

泣きっ面に降格人事


今日の地球は

尊い犠牲の上にある事を

忘れてはならない

9/23/2024, 11:43:43 AM