「ただいまー!」
「お帰りなさい」
「おやつは?」
「テーブルにドーナツが用意してあります、
その前に手を洗って下さい」
「はーい」
「宿題はありますか」
「あるよ、あとで見せるね」
「スキャンしておくので先に出して下さい」
これは子どもたちが下校後、私が仕事から帰るまでの見守りロボと子どもの会話だ。大きさは30センチほどのコロンとしたボディで動きこそぎこちないが、搭載されたAIには私自身の思考や知識、子どもの発育に合わせた心理や教育全般などをできる限り深層学習させてある。
日々更新が必要なデータは逐一追加していて、子どもたちの宿題対応、習い事や友達との約束管理もできる。体調不良時には症状をまとめて出先の私やかかりつけ医に連絡が入るし、調べものや簡単な悩み相談にも応えてくれる。便利だし、安心だ。
仕事がない時にはもちろん私が子どもたちと一緒に過ごす。どんなに便利でも本物の親の愛情がこもった世話とは比べものにはならない。
張り切って手の込んだおやつ作りに苦闘していると、背後でヒソヒソ囁きあっている。
「ちょっと頼りないけど、たまにはポンコツなお母さんも悪くないね」
「たまには」
#352
3/5/2024, 11:05:21 AM