白いカーテンが揺れる。ふわり、靡くその動きはいつかの髪の毛に似ていた
「風が気持ちいいねえ」
水を替えたばかりの花瓶を手に、横たわる彼女へ声をかける。独り言にも似たそれは、何回目のものだったか。彼女に似たやかましい色の花々は、白の多い部屋では主張が激しい。
窓の向こうで、芽吹いたばかりの若葉が太陽のひかりを返していた。きらきら、さらさら。それは彼女が動いたら見える音と一緒で、ちくりと胸を刺す。
「……今年も、夏の準備をしなくちゃね」
白くなってしまった手を握る。伸びた前髪をそっとかき分け、額に唇を落とす。
「花火と蚊取り線香は外せないよね。きみ火薬好きだし」
薄ら漂うエタノールの香りを振り払って、瞳を閉じる。
「僕が準備してあげるなんて、特別なんだからね」
――雨の降る、音がした。
8/3【目が覚めるまでに】
8/3/2023, 2:17:35 PM