紫陽花

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「最近急に雨降るようになったなー」

そう言ってすぐ近くで歩いている幼馴染に声をかける

「ほんと!ずっと晴れてたのに最近は雨ばっかりで嫌になる!髪もうねるしジメジメして暑いし」

「いやお前小型扇風機持ってんじゃん!」

雨に嘆いていた幼馴染は女子がよく持っているハンディファン?というものを持っている

「これ持ってないと終わる。汗かきたくないし汗かいてる女子嫌でしょ?」

「いや別に嫌じゃないけど…」

「え?なんて?」

そう呟く声も雨によってかき消される

「なんでこの距離できこえねーんだよ!」

「仕方ないじゃん!雨降ってんだもん」

「お前が傘持ってくれば良かった話だろ」

「最近晴れだったんだもん。それに朝なんて忙しいから天気予報なんて見てらんない」

そう言って前神を伸ばす仕草をする

「それに女子と相合傘できてうれしーでしょー?笑」

意地悪な笑顔でこちらを見つめてくる幼馴染は雨に似つかわしくない晴れやかな顔だった

「お前にだけだからな」

そうボソッっと呟く言葉もきっと雨に消されてしまった

「え?」

隣を歩いていた幼馴染が急に足を止めた

雨に濡れないように俺も足を止める

「今なんて…?」

「別になんも言ってねーよ」

どうせ聞こえてない

そう思って歩き出そうとする俺に慌てて駆け寄って黙ってる幼馴染

「……」

雨で気分落ち込んだか?

なんて声をかけよう

そう思っていると幼馴染の声が俺の耳にハッキリ聞こえる

「…私も…あんただけだから」

「え?」

今度は雨にかき消されることなくハッキリと聞こえる

隣を歩く幼馴染の顔を見ると顔を少し赤らめ俺の方を見ている

「俺だけ…?」

「そう…私も相合傘するのはあんただけだから」

顔を赤らめそっぽを向く

「え、ま、待って、マジで…?」

「マジ!」

その場に立ち止まり赤く染めた顔のまま頬を膨らませる

正面に立ち濡れないように傘を傾ける

「俺も…相合傘するのお前だけだから」

そう言って傘の中で彼女にキスをする

彼女の顔を見ると嬉しそうに微笑んでいる

雨に濡れた髪が必要の無くなった傘を畳んでいたときに差し込んだ光によってキラキラ反射する

彼女の髪をすくうと嬉しそうにはにかんで笑っている

今まで傘をさしていたけど近くに寄って腕を組む

「1回目の嫌じゃないって言葉もしっかり聞こえてたよ笑」

「はぁ!?じゃあ聞き返すなよ!」

「え〜いいじゃ〜ん!聞きたかったんだもん」

そう言って笑う彼女には一生勝てないんだろうな

今日の俺らの傘の中の秘密は宝物だ

6/3/2025, 12:52:18 AM