明里

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“特別な夜”

いつも通りに、毎日、変哲の無い、平和な、変わりなく、
今夜もまた繰り返す 何年も

明けては暮れて 眺めては白ずんで
数えては過ぎ去って いつも誰にでも等しく来る

ニュースが誰かを写している
厳しい顔 悲しい顔 嬉しい顔 笑った顔
誰しもがやるせなさを抱えながら
また今日もほとんど無力な日が暮れる

たまには夜中に庭に出て青白く光る雪と戯れる
誰も居ない まだ足跡さえついていない生まれたての雪の
しゃくしゃくした音をつかんで脳裏に浮かぶ思い出を形にする 夢遊病のように老婆がうつろな顔で真夜中に歩いてくる
一瞬妖怪と間違えて息をのむ
これでも私はたいていの場面でレディだ
でもそんな日もある

だれも知らない駅前の通りをあてもなく歩く
ショーウインドウの景色を楽しみながら
ワゴンのシューズに立ち止まる
知らない人が話しかける 誘われてご飯を食べる
知らない人の連れの容態を気にかける
不思議なコンビ状態に適度な時を見計らい
別れを告げて通り抜ける
これでも私は非社交的な人見知りだ
だけどそんな日もある

昔の知り合いと借りたウイークリーマンションにいた時は
クリスマス間近の夜に子猫がやって来た
夜中にコンビニに出かけ夜食を買い込み
当てのない人生に途方に暮れてながら
玄関の前でカードキーを取り出したとき
同じように痩せ細って帰る当てのない野良猫が
こちらを見上げて微笑んでそのまま家族になった
行く当ての無い二人でコンビニのチキンを食べた
当時の私はイヌ派のネコ嫌いだった
しかしそんな日もある

後になれば全てが特別だとわかる
毎日が特別のパレードで
自分がどれをピックアップするかの違いなんだと
いつもそこにあるのに
見過ごされて粗末になりがちな
可哀想な数多の夜達に思いをはせると
ほお杖をついて遠い目をしたその顔の
上空に広がる星の夜空が
世界の広さと丸さを示していた


1/22/2024, 7:34:45 AM