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大空が落ちてきた。僕は潰れた。

僕が作った世界は狭いがとても美しい。人間はいなくて不思議で愛らしい生き物が沢山いる。建物もひとつ大きな僕の屋敷があるだけ。毎日本を読んだり生き物と遊んだりして暮らした。
そしてこの世界で唯一大きなもの。それは空だった。どこまでも遠く手が届かぬ空は神秘的であった。

だが、ある日空が落ちてきた。遠くどこまでも続くと思っていた空はただの屋根に過ぎなかった。そして生き物達も死んでいった。辺りはもう原型を留めていない。空が降ってくる。不思議と上を向く気にはならなかった。


ああ、誰かが僕の大空を、広大な夢を壊していく。


僕の頭上には大空があった。

12/21/2022, 3:46:10 PM