#春爛漫
今日は寒い。
春分の日を迎えて、これから春がやってくるというはずなのに一向に暖かくならない。
俺を守ってくれるはずの段ボールも、昨日の雨でその役目を果たせすことなく溶けてしまった。
ただでさえここしばらくまともに食べていないというのに、身体から熱を奪っていく神様はどこまで俺のことが嫌いなんだろうか。
「あぁ、神なんていないんだったなあ」
でなきゃ、今俺がやっていることがなぜ咎められないのだろうか。
暖を取るために枯れ木につけた火は、瞬く間に俺が間借りしていた社に燃え移った。
雨が降っているにも関わらずだ。
燃えるはずのないものが燃える。
社を大火が飲み込み、時々バチバチと光を放つ様はまさに春爛漫。
呆然と眺めていたらだんだんと暖かくなってきた。ようやく俺にも春が来たようだ。すぐに夏になっちまいそうだが。
「でも、これが神様からのプレゼントってやつなのかな」
案外、神様にも嫌われてなかったのかなと思った次の瞬間。
脳天から足に向かって衝撃が俺を貫いた。
一瞬の轟音のあと「あぁ、これが春雷か」なんて益体もないことを考えたがすぐに意識は消える。
意識が消える直前、言葉が聞こえた気がした。
「社燃やされて嫌わない理由がねぇだろ」
4/10/2023, 2:10:43 PM