「君の奏でる音楽って、繊細で美しいよね」
ピアノを弾いているとき、彼はいつもそう言ってくれた。自分のピアノ歴は浅すぎて、自分が奏でる音はどれも汚いのに、彼はいつもそう言ってくれる。
それが嬉しくて、彼にもっと話しかけてもらいたくて、たくさん練習して、去年音大に入った。
でも、彼は今、美しいバイオリンを奏でる先輩に夢中だ。
私がピアノを弾くと、いつも駆け寄ってきてくれたのに、今はそんなこと一切ない。ずっと、先輩のそばで先輩の奏でるバイオリンを聴いている。
あなたのために、ピアノの練習をしたのに。
あなたにもっと褒めてもらいたくて、音大に入ったのに。
あなたにもっと好きになってもらいたかったから…。
練習してせっかく美しくなった私が奏でる音楽は、最近だんだん美しくなくなっている。
8/12/2024, 1:10:10 PM