『この世界の終わりは美しい』
いつか誰かが呟くのを聞いた。
世界の終焉は誰もが悲しむものだが、その終わり方は賛否両論だった。
『世界が終わるとき、雪がすべてを覆いつくす』
それは静かな静かな終わり。
雪が音もなく降り積もり青い影を作る。
誰かが役目を果たさなければやってくる、白銀の終焉。
その誰か、は僕だ。
剣を携えて、降り積もり始めた雪の道を行く、
(やりたくない、な。終わるなら終わればいい、こんな世界)
寒さと音のなくなっていく世界を終わらせるために、僕は君のいる家に向かっていく。
窓から漏れる灯火を頼りに、断られると分かっている最後の旅路の誘いを君にしに。
「行こう。僕と一緒に」
まさかその後、君が記憶喪失になるなんて思わなかったけれど。
12/29『静かな終わり』
オマージュしてないでそろそろオリジナルをとは思っている。
迷子になってしまった。
帰る道がわからなくなってしまった。
変える道がわからなくなってしまった。
暗雲たれこめる迷路は行く先を暗く閉ざしてしまう。
それでも、勇気さえ忘れなければ。
消えていても、また火を灯すことさえ出来れば。
黒雲は消え去り、いつしか道が示されることだろう。
行く先はわからず、目の前の道しか見えなくても、灯火さえ消えきってしまわなければ。
いつかかえる道が、おのずとわかる日がくるのだろう。
12/28『心の旅路』
雪の女王が問いかけた。
「鏡よ、鏡。世界で一番美しいのは誰?」
これはとある女王から譲り受けた鏡だった。
鏡に問いかければ、なんでも答えてくれるという。
「はい、それは雪の女王様。あなたです」
鏡がぼんやりと黒く靄がかったかと思うと、顔の形をした影が表れてそう答えた。
雪の女王はそれを聞くと溜め息を吐き、腕をかざして影に下がるように命じた。
いつからか、答えの変わらなくなった問い。
「世界中」とは、この雪の渓谷だけでなく様々な人がいるはずだ。その中で一番とは。
女王は優越感もあったが、反面鏡の答えを疑ってもいた。
何しろこの城には女王一人しかおらず、比較する対象がいなかったからだ。鏡に騙されているのかもしれないとも思ったのだ。
ある時、女王は再び鏡に問いかけた。
「鏡よ、鏡。この世で一番美しいのは誰?」
「はい、女王様。それは雪のように白く美しい、あなた様でございます」
女王はその答えを聞いた瞬間、ふうと氷の息をかけ、鏡を凍らせてしまった。そしてかけていた壁から外すと、地面に叩きつけて割ってしまった。
それは答えが変わらないことによる怒りだったのか面白半分だったのかはわからない。
いずれにしろ女王は退屈だったのだ。
女王は退屈しのぎにそりを出し、数十年ぶりの散歩へと出かけようとしていた。
割れた鏡の破片は空から雪のように街へ降り注ぎ、とある少年の目に刺さった。
12/27『凍てつく鏡』
12/29/2025, 3:17:56 PM