君が隠した鍵
君は、冷たい人だ。
君は、何を考えているのかわからない人だ。
いつも笑っている君の目は、いつも笑っていなかった。誰も、それに気づいてはいない。
柔らかな物腰に、綺麗な言葉。凛とした立ち姿。そんな君に惹かれる男は多かった。
君に近づいて、気づいた。優しい雰囲気に、緊張の糸が張り巡らされていることに。ふとした時、丸い目が冷たく、つり目になることに。その瞳に、光がないことに。
それが、君の素の姿なのだと悟った。でも、君はその姿をこんなにも近づいたのに、隠し続けている。
あんなに大きく優しい母のようだった君は、小さく震える子どものように思えた。
君は、いつも仮面を付けていた。何重にも重なる仮面の下は見えない。そして、心が傷つかないように鍵をかけ、凍らせていた。
それに気づいてからは、君の心を温めようとした。
君の鍵を探した。
君自身もわからなくなった鍵の在処を探し続けている。
11/24/2025, 12:00:30 PM