せつか

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思い出、と呼ばれるものはあまり無い。
たとえば私は、七歳の誕生日に絵本を貰った。
その絵本は今でも部屋にあって、時々読んでいる。私の大好きな本の一つだ。
けれど、その本を貰った時自分がどんな反応をしたのか、両親はなんと言ってその本を贈ってくれたのか、まるで思い出せない。
「七歳のお誕生日おめでとう」
本の見返しに鉛筆で書いてあるその文字は、母のものだ。だから私は、この本を七歳の誕生日に貰ったのだと認識している。
けれどそれは、記憶、もしくは情報であって「思い出」ではないのだろう。

「たくさんの思い出をありがとう」
よく使われる表現だ。

けれど私は、「思い出」がよく分からない。

分からないまま、ただそれが美しいもの、もしくは人が持つ当たり前のものとして受け止め、使っている。

そこに感情が伴っていなくても、それは思い出と言えるのだろうか?



END

11/19/2023, 12:55:40 AM