うどん巫女

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終わりにしよう(2023.7.15)

「もう、終わりにしようと思うんだ。」
あぁ、やっぱり、そっかぁ。
目の前の先輩から告げられた言葉に、私は心の中でそう呟いた。

先輩と初めて出会ったのは、高校に入学して間もない頃。入学前から興味のあった科学部へ見学に行った私は、そこで先輩に恋をしてしまった。まぁ、いわゆる一目惚れというやつなんだと思う。でも、人当たりがよくて真面目な先輩のことが好きな人はたくさんいて、私はこの恋心が実らないであろうことをすぐに悟った。だから、あくまで普通の『後輩』として、先輩に接するようにしていた。先輩は面倒見のいい人でもあったから、私たち後輩に実験の手伝いをさせながら、いろいろなことを教えてくれたり、親身に相談に乗ってくれたりした。時には、休日に一緒に実験に必要なものの買い出しに行ったりもした。そのたびに、「まるでデートみたいだな」なんて思ってしまう私は、きっととても浅ましい人間なのだと思う。
先輩が三年生になってから半年。そろそろ、先輩も引退の時期を迎えていた。都市部の大学進学を目指す先輩は、部活を引退すればもうほとんど学校に来ることはない。私との接点は皆無に等しいだろう。そう思うと、これまで上手くしまい込んできたあの恋心が、急に熱を持ち出して、気づけば、私は先輩に告白していた。先輩はとても驚いた様子で、少し沈黙した後、返事は明日でもいいかと尋ねた。あぁ、きっと、断られるんだなぁと思いながらも、私はそれを了承した。
そして、今日がその告白の返事の日。先輩は、真剣な顔で、「もう、終わりにしようと思うんだ」と言った。
「あはは、そうですよね、やっぱり、私なんかじゃ…」
先輩もひどい人だ。何も始まってすらいないのに、「終わりにしよう」だなんて。
「あぁ、今までの曖昧な関係は終わりにしよう」
「え?」
萎んでいたはずの恋心が、少し頭をもたげたような気がする。いや、まだ早とちりかもしれない、これまでの先輩後輩の関係すら解消したいという意味かも…。
「本当は、もっと早くに俺から言うべきだったんだが…言わせてしまって申し訳ない。俺と、付き合ってくれませんか?」
「!…は、はい!喜んで!」
どうやら先輩は、口下手なところもあるらしい。今回はそんなところに翻弄されたけれど、どんな先輩だって愛おしく思える。だから、これからも、そんな先輩を一つずつ知っていけたらいいなと思う。

7/16/2023, 1:02:10 AM