Ami

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 紅茶の香りがする場所に行くと、何となく落ち着かず、そこに自分がいるべきでないような「アウェー感」を感じてしまう。

 コーヒー党だけれど、決して紅茶が嫌いなわけではない。ただ、普段の生活の中にはない、よそ行きの香りと認識するのだ。
 紅茶にも様々な種類があって、それぞれ味や香り、美味しい淹れ方にも特徴や違いがあると耳にしたことはあるが、奥深いそんな世界に足を踏み入れたことは、これまでにない。

 子どもの頃、学校から帰るとお客様が来ていることが時々あった。たいていは近所の人や母のパート仲間、或いはママ友で、他愛ない話をしに母を訪ねて来た人たちだ。
 お客様がいる間、リビングは「いつもの」リビングではなくなる。普段ならためらいなくテレビをつけ、冷蔵庫を開けて飲み物を取ったり、おやつを好き勝手に食べるけれど、お客様がいると、それらをやってはいけないような気がしてしまうのだ。自分の家なのに、何となく居心地が悪く感じて、思うように振る舞えなかった。
 お客様の中には、ちょっと高価なお菓子を手土産に持って来てくださる方もいて、それらをごちそうになることもあったが、そんな時に、こちらも根っからのコーヒー党だった母が決まって淹れるのが、めったに飲まない紅茶だった。

 そんな子ども時代の記憶とリンクしていたのだろう。どこか自分には似つかわしくない「高嶺の花」のように思い込んでいたのではないだろうか。
 でも、もう卒業してもいいのではないか。手頃な値段で手に入る、美味しい紅茶もある。コーヒー党なのも変わらないし、今さらツウにはなれないけれど、気軽に手を伸ばしてみたら、私の意識もアップデートできるのかも知れない。

10/28/2024, 4:52:24 AM