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突然の別れ

……当然のことだと思っていた。けれど内心は恐れていた。「別れ」。
あまりにも唐突すぎて、その為の計画を立ててなかった。「ねぇ、なんで来るの?」と少女は大粒の涙を零していた。
―――しかし、その姿を見るものは誰もいません。
誰も気にしないのですから、

「何故、別れがあるのですか」
「それは、別れの分だけ出会いがあり、出会いの数だけ別れがあるのですから」
「まぁ、何ともあり溢れた普通の言葉なんでしょう。
―――それでは私は納得しませんよ。」
「うーむ、これは難しいな。」
「そうでございましょうか。」
「別れの分だけ出会いがあり、出会いの数だけ別れがあるという回答以外には、綺麗な答えがないのです。きっと心を抉ります。」
「―――それでも構いません。」

……
「それは、当然の事です。慣れなさい。」
「よ、予想以上に心を抉ってきますね……」
「それが人間らしいのです。」
そう言って、彼は立ち去ってしまいました。

5/19/2022, 12:33:39 PM