初心者太郎

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青い絵の具を空に塗ったような天気だった。今日は散歩日和だなと思って、近くの公園に向かった。

石畳の小道を歩いていると、傍に生えている木の下で涙を流している少年がいた。小学校低学年くらいだろうか。この公園はかなり広いので、おそらく迷子だろうと思った。

「お父さん、お母さんはどこかな?」
「……」

涙を流すだけで口は開いてくれない。困ったなあと頭を悩ます。
とりあえず、目線を子供に合わせるようにしてしゃがんで慰める。

「大丈夫だよ、きっと見つかるから」
「お姉ちゃん、違うの……」

違うと言われた。迷子じゃないということか。

「じゃあ、どこか怪我しちゃったの?」
「ううん……」

外傷は見えないが、念のため確認した。

「友達とケンカしちゃったとか」

それにも首を横に振られた。だとすれば、原因はなんだろうか。次の回答を考えていた時だった。

「あのね、今度の舞台でね、泣かなくちゃいけないの。その練習をしてたら涙が止まらなくなっちゃったんだ」

私は驚きと共に、少年を尊敬した。
その舞台を絶対に観に行こうと思った。

そしてその少年が有名になるのは、一年後の話。もちろん私はファンになった。

お題:涙の理由

9/27/2025, 12:57:18 PM