渚雅

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よくわからなかった。
好きとか嫌いとか良いとか悪いとか。

ぜんぶぜんぶ楽しかった。
どれもこれも面白かった。
何もかも興味があった。


全て どうでも良いけれど



正直何にも思い入れがなかった。だって固執したところで疲れるだけで 期待するだけ裏切られて 信じたところで何も変わらない。

なら,おいしいところだけ 綺麗な面だけ 欲しいものだけ見つめていたら幸せになれる。不幸も不快も知らずにいられる。世界は美しいだけで完成する。それが己の思う箱庭の幸せだった。




「なんで嫌いなものに関わるの?」

それは純粋な疑問だった。君は僕が嫌い なら距離を置けばもっと楽に過ごせるのに。無意味な労力を消費せずに済むのに。個人的に,嫌いは無関心に似ていた。

単純な思考回路で動く僕には,いちいち嫌味を言いに来る目の前の人物の行動はどこまでも奇怪に映る。


「あ? そんなの決まってるだろ」

嫌いなくせに反応は返してくれる。目を逸らしたりはしない。僕にとって複雑極まりない感情を教えてくれるのはいつだって君だった。知らない気持ちに名前をつけるのは毎回君だった。

無関心と嫌いに境目を引いたのも君だった。


「きらいだからだよ」

彼の言う好きや嫌いは僕と違って選んだものだった。だからそんな言葉ですら少しだけ眩しくて不思議な気持ちになる。それは不愉快ではないから きっと明日もこうしているのだと思う。

それを "好き"だと気づくのはもう少し先の話。



テーマ : «好き嫌い» 110

6/12/2023, 11:00:03 AM