明永 弓月

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 展望デッキから見渡すとそこは光り輝いていた。一瞬目を奪われ、それと同時に息を呑む。
 ふと思い立ち、仕事を終えた後タワーに登ることにした。仕事終わりに寄れる距離にある、街を見下ろすタワー。金曜日の夜ともなれば友人同士やカップルも多い。ひとりで来ている人も多からず見つけられた。
 日本三大夜景といえば函館、神戸、長崎の夜景と言われる。三大夜景の地は港町だなと、何とはなしに過る。


 帰宅の途につく。電車に揺られている。この電車の正面のライトや車内の照明は、夜景の一部かもしれない。たまらない気持ちで鞄を抱えた。
 家までのんびり歩く。カーテンから漏れ出ている光、マンションの明かりがついた部屋が見える。
 家に帰ると、あたたかい照明の色に迎えられた。おかえり、という声にただいま、と返す。ただそれだけのことがとても愛おしい。
 夜景を生むのは人の営みだ。


9/19/2024, 9:54:58 AM