「貴方の帽子」
咲かぬ花
横たわる冷たい花。
傍には古くなってボロボロになっている。
貴方のお気に入りの帽子がある。
「ふふっ、懐かしい」伏し目がちに貴方を見る。
けれども返事はかえってこない。
代わりに和やかな風が耳を撫でる。
「今日もいい天気よ。こんな日は帽子を被って
外にお出掛けしたいわね」
「・・・・・・・・・」
「ねぇ、覚えているかしら?貴方に初めて手編みで帽子をあげた時の事、普段のぶっきらぼうな顔じゃ想像つかないくらい無邪気な子供のような笑みで喜んでくれたわね」貴方との思い出をページをめくるように思い出す。
途端に大粒の雨が頬を流れる。
「なんで、先に、、、」
戸惑い
ごく普通の日常、ごく普段の会話特に何も変わらない
いつも通りの日常に訪れた突然の出来事。
その日の私達はいつも通り健康診断に行くために病院を訪れていた。
レントゲン、血液検査など検査を済ます。
「今回の血糖値上がりすぎよ貴方、お酒も程々にっていつも言ってるのに、はぁ、、」
「ちょっとばかし会社の話で盛りあがり過ぎてな、次は気をつけるわぃガッハッハッ」
たわいもない話をしながら待合室で待っていると
先生に呼ばれた。
普段はそのまま会計を済まし病院を出るが、この日は
先生や看護師の顔が少し曇ってみえたが気のせいかと
思い診察室に入る。
診察室に入ると先生が重い口を開く。
「あの、突然の事で驚かれるとは思いますが、旦那さんの血液検査の結果、癌が見つかりました。」
「えっ、、」
突然の事で頭が混乱する。
「癌って、どうして、、」
普段から食生活がみだれてるわけでもない、不規則な生活をしているわけでもない。ただお酒の量が人よりも多かっただけだ。と自分に言い聞かせる。
そんな様子を見兼ねた先生が口を開く。
「癌は治療すれば治りますが旦那さんの場合ステージ4でしてかなり進行してしまっており治療は難しいかと、、我々もできる限り最善を尽くします。」
それから私たちには想像を絶する生活を余儀なくされた
抗がん剤の強い副作用による嘔吐や脱毛
大好きなお酒も飲めず食べれるのは味のないお粥
貴方はみるみるやせ細っていきやがて管を通しての栄養しか取れない状態になっていった。
それでも右手には必ず私が編んだ帽子を握りしめていたのを亡くなる直前に看護師さんに聞いたときは声が枯れるまで泣いた。
日常が壊されたあの日の出来事は今だ心に深い爪痕を
残していった。
貴方の帽子
月日が流れ、今日は貴方の墓参りに行く。
コスモス色のワンピースに身を包み頭には私が編んだ
貴方の大切な帽子を被り向かう。
今まで貴方がくれた大切な宝物を抱きしめて、、
ここまで読んでくださりありがとうございます。
詩を書くつもりが小説みたくなってしまいました笑
実は言うとこの物語はフィクションでもあり1部は実話を交えて書かせて頂きました。
少し表現がおかしいところもあると思いますが暖かく
見守ってくれると嬉しいです。
また読んでくださった皆様の元に素敵な作品を届くようにゆったり更新しながら書いていこうと思います。
では、、、
1/29/2025, 9:19:02 AM