仕事の帰り道、ふと道沿いの花屋が目に留まる。
数多くの花がカラフルに並べられているけれど、
ひとつひとつの花は周りに負けることなく
輝いていて。
そんな姿に惹かれて足が止まった。
たまには…
たまには花でも買ってくか、
今日は記念日でもなんでもないけど。
アイツ、花好きだもんな。
──なにかお探しですか?
「…恋人に贈る花が欲しくて」
口に出して、急に恥ずかしくなった。
何でもない日に花を買っていくなんて。
──丁寧に包まれた花を持って俺は再び帰路に着く。
俺が手に持っているのは、一輪の赤いバラ。
花言葉は【愛情】、彼に送るにはピッタリだ。
喜ぶアイツを想像しながら玄関の扉を開けた。
『おかえり〜!』
「ただいま」
扉が開く音を聞きつけて来たのか、パタパタと近づいてくる彼。
「あの、これ、いつもありがとな」
『わぁ!綺麗なバラだね!急にどうしたの?』
今日記念日だっけ?と彼は首を傾げた。
「いいだろ何もない日だって、たまには。」
〜たまには〜
3/5/2023, 6:42:46 PM