私、永遠の後輩こと高葉井は、
職場の昼休憩中に、なんか妙な夢を見た。
私は知らない場所を全力で走ってて、
私の前を、誰か男の人が同じく走ってる。
それが誰は分からない。
声は私の推しカプの右側に似てるけど違って、
顔は逆光で分からない。
私は走ってる間にコケて、
その人は、私をお姫様抱っこして走り続けた。
夢の最後でどこかのヘリポートに着いた私と誰かを待ってたのは、
私と同じ職場に勤めてる同僚の、付烏月(つうき)さん……に似てるけど違う声の男性。
これまた顔は逆光だ。分からない。
『つんでれ?』って茶化されたから、
私はそいつを引っ叩いて、
それで、起きた。
…——「っていうことがあってさ」
「そーなのかー」
「ヘリの近くで電話してた誰かが、付烏月さんの声に似てたけど、違う声でさ」
「そーなのかー」
「なんだったんだろうってさ」
「後輩ちゃん電話対応ヨロシクねん」
「こんにちは私立全世界図書館東京分館でs
はいゲーム『世界線管理局』コラボのストラップですね。ルー部長版もツー様版も在庫十分でs
はい私もツル派ですお待ちしてます
お取り置k はい不要で。 お待ちしてます」
図書館職員室で自分の仕事をしながら、
同僚で、夢の中に出てきたっぽい付烏月さんに、
なんとなく、私はそのハナシを持ち出した。
特に意味は無い。
強いて意味を付けるなら、私の職場で開催中の、
「その」推しイメージのパラコードストラップ。
有償で推しカプの、右と左のストラップが配布されてて、私は職員だけどまだ買えてなくて、
在庫に関する不安を、まぎれさせるためだ。
「大盛況だねぇ。管理局のパラコードストラップ」
「だってこの図書館がそもそもあのゲームの聖地」
「後輩ちゃんも買ったの」
「5セット買い『たい』。 買えてない。
……なんで私の夢、推しカプの右側モドキと、
左側じゃなく付烏月さんモドキが出てきたんだろ」
「知りたい?」
「知ってるの付烏月さん」
「実は俺と後輩ちゃんの推しの右は別の世界線で」
「はい私立全世界図書館東京分館です。
はいゲーム『世界線管理局』コラボのパラコードストラップはまだ双方在庫十分でs
すいません転売ヤーに差し上げる分は無いです
お引き取りください失礼します」
「別の世界線でルーブチョと俺は同期の同い年d」
「はいこんにちは全世界図書館東京分館です」
在庫は十分。ざいこはじゅうぶん。
書庫にいっぱいパラコードが入荷して入ってきたから、間違いなく、在庫は十分。
だけど最近は転売ヤーが多いから、不安で不安で仕方無い、けど在庫は十分。
安心と不安が、ごっちゃだ。
「後輩ちゃん、先に買ってくれば?」
「サキニ、ライカンシャ‐サンニ、ハイフ」
「本心じゃないのバレてるよん」
「ダイジョウブ、ライカンシャ‐サンニ、ハイフ」
「真面目だねぇー」
安心と不安、安心と不安。
推しグッズの在庫の需要と十分な段ボール箱。
私はその日の午後の時間を、在庫データの更新と確認と更新で、1割くらい使った、気がした。
結果として退勤前に欲しい数の推しグッズは手に入ったので、私の不安は、安心で終わった。
1/26/2026, 4:11:29 AM