閉ざされた日記(オリジナル)
(もう、これしかない)
俺は目の前の日記帳に手を添えた。
一週間ほど前、交通事故に巻き込まれて頭を打った。大きな怪我はなかったが、記憶喪失になってしまった。
医者は一時的なものだろうと言う。
財布に入っていた免許証の顔写真が一致して名前と住所が判明したので、とりあえず退院し、自宅に帰ってきたのだが。
まだ何も思い出せずにいる。
病院に家族も来なかったし、仕事の同僚や上司が尋ねてくる事もなかったので、自分がどんな人間であったか、手掛かりが何もない。
マンションの部屋は物が少なく、嗜好がわかるような装飾品もなく、とても殺風景だった。
スマホは生体認証登録がなく、パスワードがかかっていて、それも忘れたため、本人なのに開けなかった。
家探ししたが、パスワードらしきメモも見つからず、現状お手上げ状態だった。
ショップに行けばまぁ、何かしら対応できる事もあるだろうけれど。
その家探し中に見つけたのが、この日記帳であった。
市販の日記帳で、物理的に鍵がかかっている。
鍵は見つからなかった。
鍵部分は金具であるが、ベルト部分が裁ち鋏で切れそうだった。
もしかしたらスマホのパスワードなり、記入があるかもしれない。
俺は革の部分をバツンと切った。
(ん?)
何かが頭の隅をよぎった気がしたが、明確な記憶として蘇ってくるものはなかった。
仕方なく、日記帳を開く。
パラパラとめくってみるが、日記帳か疑わしい記述ばかりが見つかった。
日付と地名と手書きの地図と。
パスワードのような数字の羅列もあるが、自分はなんて用心深かったのだろう、何のパスワードか説明が書いていない。
試しにスマホに入力してみるが、開かなかった。
まさか記憶喪失になるとは誰も思わないだろうし、仕方がないか。
俺は日記帳を閉じて伸びをした。
明日スマホのショップに行ってみよう。
そこに、ピンポーンとチャイムが鳴った。
何も考えずに扉を開けて、俺は心底後悔した。
「警察です」
記憶が一気に蘇った。
様々なものを隠してあるロッカーのパスワード!
そして、犯行日時と場所!
(紙に残すとか、俺、馬鹿じゃねぇか!?)
俺は連続殺人犯だった。
1/18/2026, 12:39:02 PM