〈今日にさよなら〉
「すみません、遅れました。」
待ちに待った君は、走ってきたのか少し息が乱れていて、俺を待たせたことに謝った。
実際の時間にしたら、なんてことない間だったと思う。しかし、なんとも途方もなく感じた。
自分からやっとので送ったメール。呼び出した場所で壁掛け時計を睨み付けてから俯いて、手を握ったり開いたり。そして、開かないドアを上目遣いでチラと見る。何度繰り返したか。
「や、ごめん。忙しかった?」
「少し片付けに手間取りました。…何かありました?」
早く来いと念じていたくせに、いざ目の前にするとどうすればよいか分からなくなって、とりあえず“いつもどおり”を目指したつもりだったのに違っていたようだ。ちょっと焦る。焦ると同時に、自分を理解してくれているようにも感じて嬉しい。
「あのさ、」
自分でも驚くくらい、緊張して掠れた声が出た。
「すき、なんだけど、」
あれ、俺っていつもどうやって声出してたっけ。喉が、きゅう、と締め付けられて、うまく声がでなくて、
2/19/2024, 7:36:32 AM