先祖代々受け継がれている箱がある。
手のひらサイズで、全面が黒で塗られている。派手な装飾も無ければ、お札が貼られていることもない。経年劣化も見られず、艶々とした漆が光を反射している。
ただし、この箱には一つだけ、『絶対にこの箱の中身を見てはならない』決まりがある。
箱には開けるための取っ掛かりがなく、中身を見るには壊すしかない。そんな罰当たりな事をする人がいるはずもなく、決まりは100年もの間守られた。
しかし、遂にそれが破られる日が来た。
20代目の少年が、誤ってその箱を落としてしまったのだ。落ちた場所は悪いことに階段で、そのまま箱はゴロゴロと落ちていき、
ぐしゃり
何かがひしゃげる音が階下から響く。
少年は慌てて箱の様子を見に行った。
砕けた黒い箱は四散し、その中央に日本人形の生首が転がっていた。遠目で見ると、断頭台で首を切られたばかりの女の首のように見える。黒い血液がじわじわと広がり、ガラス玉の目は何も映さないまま。
「ありがとう」
そう、人形の口が動いた気がした。
少年は小さく悲鳴を上げ、その場を立ち去ってしまった。
10/25/2025, 2:08:11 AM