彼女の左肩を凮が解放してくれたから、意気地無しの俺は剥き出しとなった地点を目掛け、ただただ一目散に左手を伸ばせば良かったんだ。
§
何と間の悪い人なのだろうこの男は。
ついさっき縮毛矯正したばかりだから、今宵の私の行動は大幅に制限されている。髪も綺麗に結えないし、髪も洗えないし、何より頭に圧をかけられない。出来ることなら優しく髪を労りたい。
内心はとても嬉しい。
ずっとずっと待ち望んでいたから…
でも、、、なんで今日なの!今日なのよ?
ひどいよ神様、酷すぎる。
でもでもでも、このチャンスを逃したら、この男は多分…再び長い長い冬眠に入ってしまう。いや、間違いなく。
冬眠ならまだしも、永眠してしまう可能性だって大いにある。
それだけは避けたい。
どうする私、どうする?どうする?どうするぅぅぅぅぅう!?
いやいやいやいや、730日も待ってたんじゃない!この時を!
たったの¥47.000-よ。安いものじゃない。
いいわよ!わかったわよ!くれてやろーじゃないの5万円!!!
§
不意に左肩に重みを感じた。
見ると潤んだ瞳がそこにはあった。
——— 風のいたずら ———
1/17/2025, 3:31:04 PM