カウンターだけの狭い店。ここの味が好きなのだけど、どうもカウンターの席が苦手だ。前に店主がいると、妙に緊張して、何だか落ち着かなくなる。
椅子に腰掛けようとして、ふらついたり、箸を袖に引っ掛けたり、あわあわして、せわしない雰囲気になってしまう。
小さくなって座っていると、横に荷物カゴが寄せられた。隣の人を見ると、手がどうぞというジェスチャーをしている。ああ、膝の上に荷物を置いたままだった。身動きがしにくいはずだ。お礼を言って、荷物を入れる。
反対側の人が席を立ち、後ろの壁に掛けてあった上着をとった。ハンガーをすっと差し出して、さっと出て行った。二人の何気ない感じの気遣いがうれしくて、ふっと緊張が緩んだ。
「何気ないふり」
3/31/2026, 7:05:53 AM