小絲さなこ

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「護ってくれる声」

誰かが呼んでいるような、引き上げられるような感覚がして、自然と瞼が開いた。
白い天井。
薬品の匂い。
ガードされるようにカーテンでぐるりと囲まれている。
病院のベッドか。

「……いきて、る……?」

正直言うと、死を覚悟していた。
胸を撫で下ろす。


眠い。ひたすら眠い……

あの時、聞こえた声は何だったのだろう。
あれがなければ、どうなっていたことか。
あの声がしたから、反射的に身体が動いたのだ。


頭がおかしい子だと思われるからと、誰にも言ったことはないが、危険なことに巻き込まれそうになると、どこかから声が聞こえるのだ。子供の頃から。

神様なのか、ご先祖様なのか、早くに亡くなった両親かはわからない。
以前はそれを知りたかったが、ここ数年は、あの声の主がどこの誰かなんて、そんなことはどうでも良くなった。

いつも護ってくれる存在に感謝しつつ、ゆっくりと瞼を閉じる。


大丈夫。なんとかなる。
何もかも失ったけど、生きているのだから。


────声が聞こえる

9/22/2024, 10:09:13 PM