ティム

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「ねぇ、自分を物に例えるとしたら、なに?」

教室の机に腰かけ、足をぶらぶらさせながら彼女が言う。

「また唐突だな。物か……考えたことないな」
「私はね〜、枯葉かな!」

彼女は弾みをつけて机から飛び降りると、僕の顔を覗き込むようにしてそう言った。

「枯葉……?」

天真爛漫を具現化したような彼女にはおよそ似合わない物だ。彼女を例えるなら、枯葉というよりむしろ花だろう。満開の花。

「そう、枯葉! 後は朽ちるだけの枯葉なの!」
「またどうしてそんなふうに思うのさ」

彼女はスっと姿勢を正すと、僕に背を向けて窓の方へと歩き出した。窓を開けてから振り返ると、彼女は静かに話し出す。

「……私ね、多分全盛期は終わったんだ。感性が一番新鮮で、世界を綺麗に見れる時期は、終わったの」

何を馬鹿なことを。僕達はまだ思春期真っ只中だろう。
そんな軽口が叩けないくらい、彼女の目は真剣で、憂いを帯びていた。夕焼けを映すその瞳が今にも崩れそうで、それを何とかしたくて、僕は言葉を紡ぐ。

「君が枯葉なら、栞にでもしようかな。ちょうど欲しかったんだよね」
「あはは、なにそれ。でもそっか、枯葉でも栞になれるんだ……」

開いた窓から、肌寒い風が吹き込む。風に乗って一枚の枯葉が僕らの間にひらりと落ちた。

2/19/2023, 8:21:21 PM