『誰よりも』
誰よりもあなたのことを愛していた。あなたも私のことを誰よりも愛していたけれど、あなたは私を置いて祖国へと行く。彼の祖国は宇宙を越えた遥かな星にあり、私のこの身はとても行き来できるものではない。
私よりも国が大事なのかと聞けばそうだと言われ、一生あなたのことを許さないと言えば許さなくてもいいと返ってきた。彼は別れの際にくちづけと、いつも肌身離さず身につけていた首飾りを残して行った。それが昨日のこととなり、一年前のこととなり、数十年も前のこととなった。数十年の間の一日ごとに彼のことを許したり許さなかったりしたけれど、私はやっぱりあなたのことを誰よりも愛していた。
もうすぐ私の命の火は尽きる。震える手で身につけた首飾りにそっと触れて、誰にも聞こえないほどの声でやっぱり許さないと呟いた。
2/17/2024, 7:13:20 AM